マイクロ法人 はじめての申告(2)三つのツール
こじかのマイクロ法人は2017年12月31日に第1期の決算を向かえました。2018年2月3日に郵送で法人税、法人県民税、法人市民税の確定申告を行い、2018年2月8日までに受付印が押印された各申告書の控えを入手することが出来ました。
また、今回の申告ではソーシャルレンディングで源泉徴収された所得税の還付手続きを行い、2018年2月19日(月)に指定の銀行口座に還付金が入金しました。 これらに関連する一連の作業を行うにあたり、三つのツールを使いました。今回はその三つのツールについて記事にしてみたいと思います。
1.会計ソフト
法人向けクラウド会計ソフトの「MFクラウド会計」を利用しています。本当によく出来た会計ソフトだと思います。こじかのマイクロ法人の利用では全く不満がありません。結果的に何の問題もなく年度決算を終了し、法人税の申告につなげることが出来ました。 法人税の申告書には決算書を添付しなければなりませんが、決算書の表紙から財務諸表や個別注記表に至る決算書の内容は、「MFクラウド会計」から印刷したものですべてまかなうことが出来ました。
毎月、月次決算をしていましたので、年度決算といっても毎月のルーチン作業にソーシャルレンディングやFX、税金の仕訳を追加した程度です。税金の仕訳は後述の「全力法人税」から出力された内容を転記しました。 法人の年度決算というとなにかもの凄い大変なイメージがありますが、ことマイクロ法人においては、決算書をPDF出力し印刷しただけです。拍子抜けするほど楽ちんです。
決算書の作成で少しだけ悩むポイントがありました。それは個別注記表の記載内容です。MFクラウド会計は個別注記表を出力する機能が備わっているのですが、記載内容は利用者が自分自身で入力しなければなりません。こじかのマイクロ法人は消費税等の会計処理が税込経理方式である旨を個別注記表に記載しました。記載の文言はネットで検索した内容をコピペしました。
こじかのマイクロ法人の第1期の仕訳の総数は42本で済んでしまいました。フリープラン、つまり無料のままで決算を終了しました。信じがたいですが本当の話です。営利目的の法人が利用しているにもかかわらず、無料で使うことに若干居心地の悪さを感じています。無料で利用する見返りとして、これからもこのブログでMFクラウド会計の良さをたくさん宣伝したいと思います。こじかのマイクロ法人のような弱小法人のために、運営会社の株式会社マネーフォワードさんには広い心でフリープランの条件を継続してほしいです。どうぞよろしくお願いします。
2.法人税申告書の入門書
「法人税申告書の書き方がわかる本(著:税理士 小谷羊太)」 初版は2008年と古くからある本です。2016年11月10日発行の第15刷を入手しました。税制改正に合わせてこまめに改定されているようです。アマゾンのレビュー結果は★★★★☆。レビュー結果通り、マイクロ法人の法人税申告書作成実務に耐えうる素晴らしい本でした。
- 別表?本表はどれだ?
- 損金?益金?ってなに?
- 加算?減算?ってなに?
- 納税充当金?ってなに?
- 留保?社外流出?ってなに?
- 仮払経理?損金経理?ってなに?
当初こんな感じのこじかでしたが、この本のお陰で法人税や申告書の理解が格段に進みました。法人税や申告書についてまったくのド素人がこの本で学習し、申告書を作成できるようになりました。この本の価値や素晴らしさはその一点に尽きるでしょう。この本は大きく4つの章で構成されています
- 第1章 申告書作成のための基礎知識(P8~P61)
- 第2章 すべての会社に必要な別表の書き方(P62~P101)
- 第3章 申告に必要な経理処理と税務調整(P104~P193)
- 第4章 ケースごとに必要になる別表の書き方(P196~P256)
第1章は文字通り基礎知識を身に着けるコーナーです。前述の?の嵐がすべて解消しました。P40で図解されている各種別表の相互関係図は特に秀逸です。それまでバラバラだった各種別表同士の関係をしっかりと整理することが出来ました。別表二、別表四、別表一(一)、別表五(一)、別表五(二)。すべての会社に必須のこれら別表について、第2章では各別表が詳しく図解されており、具体的な記載方法を学ぶことが出来ました
第3章は第1章と第2章で学んだことを基礎として、さまざまな税務上の論点をわかりやくすく解説してありました。こじかは、租税公課や繰延資産(創立費)の説明を参考にして、対応する別表を作成しました。繰延資産(創立費)に関する別表十六(六)は、後述する申告書作成ソフト(全力法人税)が対応しておらず、その部分は手書きとなりました。こじかのマイクロ法人では関係ありませんでしたが、第3章では固定資産や債券、役員給与や保険料など一般の法人では利用するであろう論点が分かりやすく解説されていました。
第4章は個別の論点が解説されていました。P212からはじまる「預金利息を受け取っている場合の別表」を参考に、ソーシャルレンディングで源泉徴収された所得税の還付申告を行いました。所得税を還付請求するには、相互に絡み合う別表四、別表一(一)及び次葉、別表六(一)を正しく記載しなければなりません。 特に重要な事実として、後述する申告書作成ソフト(全力法人税)は別表六(一)に対応していません。こじかのような初心者からすると、所得税の還付は非常に複雑な論点であり、申告書作成の最大の難所でした。この難所を見事にクリアし、源泉徴収された所得税を全額取り戻すことが出来たのはこの本のお陰です。著者の小谷税理士には本当に感謝しています。
その他に参考にしたのは「赤字の場合の別表」です。源泉徴収された所得税を現金(振込)で取り戻せたのは、こじかのマイクロ法人が赤字だったからです。別表七(一)、別表四、別表一(一)、別表五(一)、別表五(二)。これら赤字や欠損金に関係する別表を相互に整合するよう正しく記載しなければなりません。幸いにしてこの論点の別表は後述のる申告書作成ソフト(全力法人税)が対応していました。
3.申告書作成ソフト
法人税の申告書を作成するにあたり、クラウドサービスの「全力法人税」を利用しました。導入初年度の利用料は19,245円(税込)でした。翌年度以降も利用する場合、毎期10,800円(税込)の利用料がかります。 実は、この「全力法人税」は無料でも利用することが可能です。有料版と無料版の違いは主に印刷(PDF出力)の有無です。法人税の申告書作成経験があれば、無料版の機能を上手に利用して申告書を作成できると思います。
すでに参考書のところでお伝えしたように、全力法人税は「別表六(一)」と「別表十六(六)繰延資産」には有料版でも対応していません。特に論点が複雑な「別表六(一)」が非対応なのは痛いです。 しかしながら、ソーシャルレンディングで所得税を還付するとか、繰延資産(創立費)があるとか、非対応の別表はマイナー論点であり、多くの会社は対応する別表だけで申告可能と思われます。税理士に依頼することに比べれば格段にリーズナブルな金額で申告書を作成することが出来るでしょう。
① 全力法人税の申告書対応状況
無料版でも「別表二」と「法人事業概況説明書」の印刷に対応しているのはありがたいです。知識と経験次第では、無料版でも入力画面を参考に申告書を作成することが可能かもしれません。
法人税の申告書 | 無料版 | 有料版 |
別表一(一)法人税額の計算 | △ | ○ |
別表一(一)次葉 | △ | ○ |
別表二 同族会社 | ○ | ○ |
別表四 所得金額の計算 | △ | ○ |
別表五(一)利益積立金等 | △ | ○ |
別表五(二)租税公課 | △ | ○ |
別表六(一)所得税額の控除 | × | × |
別表七(一)欠損金の損金算入 | △ | ○ |
別表十六(六)繰延資産 | × | × |
法人事業概況説明書 | ○ | ○ |
② 全力法人税の内訳書対応状況
無料版でほぼすべての勘定科目内訳書に対応しているのは嬉しい事です。前述の法人事業概況説明書とこの内訳書を作るためだけに無料版を利用する価値はあるでしょう。
勘定科目内訳書 | 無料版 | 有料版 |
預貯金等 | ○ | ○ |
受取手形 | ○ | ○ |
売掛金(未収入金) | ○ | ○ |
仮払金(前渡金) | ○ | ○ |
貸付金及び受取利息 | ○ | ○ |
棚卸資産 | ○ | ○ |
支払手形 | ○ | ○ |
買掛金(未払金・未払費用) | ○ | ○ |
仮受金(前受金・預り金) | ○ | ○ |
借入金及び支払利息 | ○ | ○ |
役員報酬手当等及び人件費 | ○ | ○ |
地代家賃等 | ○ | ○ |
雑益、雑損失等 | ○ | ○ |
③ 全力法人税の地方税申告書対応状況
地方税の申告書の内容は、法人税の申告内容から作成されるため、専用の入力画面がありません。そのために無料版では参考にする情報がなく未対応となります。 こじかのマイクロ法人のケースでは、有料版の出力結果がオリジナルの申告書様式(埼玉県及び埼玉県某市)と異なっていました。印刷結果をオリジナルの申告書に手書きで記入し申告書を作成しました。
地方税の申告書 | 無料版 | 有料版 |
(法人県民税) | ||
第六号様式 | × | ○ |
第六号様式 別表九 | × | ○ |
(法人市民税) | ||
第二十号様式 | × | ○ |
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