民泊新法を読んでみた

 民泊のルールを定める住宅宿泊事業法(民泊新法)が、2017年6月9日の参院本会議で可決・成立しました。民泊を提供する側にとっては多少の制限が加わるものの、これにより大手を振って堂々と事業化することが可能になります。非常に大きな前進だと思います。

  せっかくですから住宅宿泊事業法(民泊新法)を一通り読んでみました。感想を一言でいうと、現実・現状を踏まえた良いルールだと思います。法律の目的を本気で達成させようとする意気込みを感じました。

住宅宿泊事業法案(衆議院)

 民泊新法は民泊に関する事業を三つに分類しているます。こじかのマイクロ法人が手掛ける予定の民泊事業(住宅宿泊事業)に関して次の三点を重視しているように思われました。いずれも現状を踏まえた実効性のある内容だと思います。

三つの重点項目

① 新旧事業者の調和 ② 地域住民との調和 ③ 民泊業者の品質確保

① 新旧事業者の調和

年間180日規制は、民泊事業を目論む者としては物足りなさを感じるものの、工夫次第ではビジネスになろうかと思います。仮に、諸外国のように90日で規制されたなら、ビジネスにはなりにくいし、旅館業者を保護して新産業の芽を摘んだとの批判は免れなかったでしょう。かといって制限を設けなければ、既存の旅館業者は徹底抗戦するはずです。現状ではバランスの良い規制だと思います。

② 地域住民との調和

騒音防止など、民泊物件周辺地域の生活環境への悪影響の防止について、宿泊者へ説明する義務が生じました。しかも、外国人には外国語で説明しなければなりません。民泊物件ごとに標識(看板)の掲示義務があり、あわせて苦情等への対応義務があるため、民泊業者は地域住民を無視して営業することができません。地域住民の声を無視すれば、いずれ業務改善命令や業務停止命令が待っています。この法律が施行されれ、内容が周知されれば、地域住民も安心して民泊を受け入れることができるのではないかと思います。

③ 民泊業者の品質確保

この法律の最大の目玉は、悪質業者やヤミ業者の排除だと思います。届出、標識の掲示、欠格事由と罰則・監督。これらの制度設計は宅地建物取引業法と類似しており、昨年宅建士を受験したばかりのこじかにとって、すんなりと理解できる内容でした。現行の宅建業法が悪質な不動産業者を排除するように、民泊新法(住宅宿泊事業法)も悪質業者を排除するのに有効な制度設計となっているように思われます。 なお、これらの規制は一戸建て住宅の民泊だけでなく、分譲マンションの民泊に対しても有効だと思います。マンションの管理規約に民泊を禁止する規定がない事を盾に、やりたい放題、迷惑かけ放題だった悪質業者は一網打尽でしょう。他のマンション住人の理解なしに民泊事業は営めません。

民泊新法の概要

 民泊事業(住宅宿泊事業)を中心に民泊新法の概要を列記しておきます。

●法律の目的

  1. 民泊業者の業務の適正な運営の確保
  2. 国内外観光客の来訪及び滞在の促進
  3. 国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与

●民泊事業(住宅宿泊事業)とは

  1. 宿泊料を受けて
  2. 一年間で180日を超えない範囲で
  3. 住宅に人を宿泊させる事業

●届出(民泊事業の)とは

  1. 都道府県知事
  2. 住宅(物件)単位
  3. 内容の変更は30日以内

●民泊に関する事業の分類

  1. 住宅宿泊事業(届出:都道府県知事)
  2. 住宅宿泊管理業(登録:国土交通大臣)
  3. 住宅宿泊仲介業(登録:観光庁長官)

 民泊事業の届出は物件単位のカジュアルな内容です。個人が住宅の空き室を貸し出すケースでも特に問題になることはなさそうです。一方で②と③の登録は厳重です。登録には9万円の登録免許税がかかります。しかも5年ごとに更新があります。宅建業者と同様に、法人や個人事業主の登録を想定しているのでしょう。登録以外のルールも厳しめです。

●業務(民泊事業の) 

  • 衛生の確保:床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃
  • 安全の確保:非常用照明器具の設置、避難経路の表示
  • 快適性及び利便性の確保:外国人へは外国語で
  • 宿泊者名簿の備付け
  • 周辺地域への悪影響防止説明:外国人へは外国語で
  • 苦情の対応(周辺地域住民からの) 
  • 管理業務の委託(大規模業者向け) 
  • 仲介業務の委託 
  • 標識の掲示:届出住宅ごと、公衆の見やすい場所
  • 知事への定期報告

●欠格事由(民泊事業の) 

  • 成年被後見人、被保佐人、破産者、暴力団関係者
  • 他の法律で禁固刑以上(刑執行後3年間NG)
  • 本法で罰金(刑執行後3年間NG) 

 本法で罰金喰らうと退場です。何か誤りがあっても改善し適正な運営をすれば営業を継続できますが、虚偽の届出をしたり、標識を出さずに営業したり、業務停止命令に従わなかったりすると退場になります。かなり実効性が期待される制度だと思います。 

●罰金となる違反(民泊事業の)

◎6か月以下の懲役・100万円以下の罰金(第七十三条)

  • 虚偽の届出(第三条一項)
  • 業務停止命令違反(第十六条一項) 
  • 業務廃止命令違反(第十六条二項)

◎50万円以下の罰金(第七十五条) 

  • 管理業務の委託(第十一条)
  • 仲介業務の委託(第十二条)

◎30万円以下の罰金(第七十六条)

  • 届出の変更(第三条四項)
  • 宿泊者名簿の設置(第八条一項)
  • 標識の掲示(第十三条)
  • 定期報告義務(第十四条)
  • 業務改善命令(第十五条)
  • 立入検査等の妨害(第十七条一項)

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